デジタルカメラ活用術

絞りとボケの関係


これまでにも同様なテーマで行ったレポートもありますが、質問箱や掲示板にも多く寄せられる撮影上のテクニックなので、改めてレポートしておきます。

デジタルカメラの場合、手前にいる被写体にピントを合わせ、背景をボカス技法は焦点距離の関係上、苦手なところです。銀塩カメラとのハード的な違いまで書くと長くなりますので省きますが、そもそも「背景をボカス」にはカメラをどう設定すれば良いのかは触れておきましょう。

最近のデジタルカメラは「絞り値」を任意に変更出来る機種が多くなってきました。それらのカメラをお持ちならば、露出で遊ぶ事が可能です。但し、先にも述べましたが、物理的な関係で、デジタルカメラの絞り値は撮影上の効果にまで影響を及ぼさない場合も結構あります。
まず、「絞り」は人間の瞳の瞳孔と同じであり、人が眩しいと感じたとき、瞳はその光の光量を抑えようと瞳孔を絞ります。反対に暗い時は開くのです。これと全く同じ物が絞り機構で、一般的には5〜6枚の羽を使って調整しています。通常は「露出」と言って光りの具合を「絞り」と「シャッタースピード」で調整し、カメラまかせのプログラムAEでは、これを自動的に行っています。カメラに詳しくならないと、ここでカメラの楽しみは止まってしまうのです。
この先は数学的な知識も出てきて数字や機械の関係が嫌いな人にはちょっと難しいかも知れません。

人間の場合に戻って、ちょっと視力の弱い人なら知っていることですが、眼鏡を外して晴天の明るい屋外に出たときは結構モノが良く見えます。これは絞りを絞っている時の現象です。では、眼鏡を外して屋内のちょっと暗い所で物を見てみるとなんだかボケて見えてしまいます。これが絞りを開いている時の現象です。
これをカメラで応用すると、プログラムAEを解除し、絞り優先AEにする事で物の写り方を変化させられるのです。カメラの絞り値をF11に絞ると、近くの物から遠くの風景までピントが合ってシャープに写ります。F2.0に開放すると、近くの物にピントが合っているなら、後ろの風景はボケて来ます。これをうまく使うとボケた背景に被写体が浮かび上がった素晴らしい写真が撮影できます。
しかし、これは銀塩カメラの場合であってデジタルカメラの場合はそう簡単には行かないのも事実です。「被写界深度」と言う概念が加わってくるのですが、この被写界深度がデジタルカメラの場合深く、どうしても開放値のボケが甘くなってしまいます。


では、絞りの効果を完全に発揮出来ないかと言うとそうではありません。デジタルカメラでボケ味を出すのなら「マクロモード」を使うのです。マクロモードは近くの被写体を撮る時に使うモードなのですが、マクロモードの撮影範囲(だいたい10センチ〜80センチ程度でカメラによって違う)であれば、被写界深度が浅くなり、デジタルカメラでも面白いように背景をボカせます。

以下に絞り値の違いによる画像の変化を載せます。


絞りF3.2  1/800s
シャッタースピードが追従できず、これ以上に開けなかったが、背景はかなりボケ味が出ているのが分かるでしょう。
これによってアヒル君が浮かび上がって見える。




絞りF5.6  1/250s
F3.2の時よりかは背景のボケが少ない。




絞りF8   1/125s
かなり背景が見えてきた。カメラによってはこんな感じの物しか撮れない機種もある。シャッタースピードの変化にも注目すると「露出」の意味が分かってくる。




絞りF11   1/60s
何か背景も見せたい物ならば絞りを絞ってこの様にする。
普通、被写体(アヒル君)を写しているのであれば、こんなに絞った写真はダメ。どこにウエイトを持ってきているのかがまったく分からない写真になってしまっている。


それと、マクロモード以外でもズームを使って撮影するとボケ味を出すことが可能です。スナップ写真を撮るのなら、被写体を頭から足まですべて入れて撮るのではなく、ズームを使って上半身、もしくは胸から上を狙って撮影すると、背景がボケて浮かび上がります。いずれも絞りは開放値にし、明るい場所では減光フィルターも併用します。

ここまでに出たのは「絞り」「シャッタースピード」「露出」「被写界深度」です。全然理解出来ない、または興味が出ない人は、今はカメラについては余り深く入らない方がいいかも知れません。その場合カメラの設定を自動にして撮影し、もしも更なるステップを希望してくなったら専門書を買ってみてください。興味が湧いてきた人はデジタルカメラの場合、撮ったその場でも確認できるので、どんどん設定値を変えて撮影して撮影して撮影して撮影して、、、、覚えていってください。撮影あるのみです。

00/01/03
デジタルカメラ大実験